東京高等裁判所 昭和56年(う)44号 判決
所論は、要するに、被告人には、単に見張役をしていたにとどまる窃盗未遂の前科が一回あるにすぎず、他に窃盗の前歴はなく、従つて本件と同一手口による集団窃盗を反覆累行する習癖があるとはいえないのに、被告人が常習として原判示犯行に及んだ旨認定してこれに盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律二条二号を適用した原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認及び法令適用の誤りがある、というのである。
………(中略)………
所論常習性の点について前示関係各証拠によつて検討すると、本件犯行の手口及び態様は、原判示のとおり、深夜の電車内で酒に酔つて仮睡している被害者を狙い、共犯者において見張りをし、被告人において背広上衣を幕として被害者のズボン後ろポケツトから財布を抜き取り窃取したものであること、とくに被告人は窃取行為を直接担当し、主要な役割を果していること、被告人は昭和五五年二月一八日本件と同一の手口及び態様の窃盗未遂事件で懲役一年、三年間刑執行猶予の判決を受けていること、原審証人長谷川高司・同近藤健助の各証言によると、被告人は昭和五五年三月二五日午後九時四五分ころ国電山手線電車内で他の二名と共謀し自らは見張役となつて本件と同一の手口及び態様の犯行に及び警察官に逮捕されようとしたが逃走したこと、その他、同年六月一四日深夜にも国電電車内で他の一名とともに仮睡者の隣席に坐るなどして犯行の機会を窺つていたのを警察官に目撃されたこと等の諸事実が認められ、これらを総合すると、被告人が常習として原判示犯行に及んだことは明らかであり、常習性を認定した原判決は相当として是認できる。